経営者さんって忙しいものだ、というイメージがありますよね。
ただ、その忙しさは「経営者」としての忙しさでしょうか?
もし、日々の「実務」で忙しくなっているのであれば、大きなリスクが隠れているかもしれません。
この記事はこんな方に向けて書きました。
- 「自分でやった方が早い・良い」と自分で動いてしまう経営者さん
- 「自分がもう一人いればいいのに」と、限界を感じている方
- 毎日アポや実務に追われ、将来の戦略を練る時間がない方

私は過去、300人の営業社員を擁する事業部のトップを支える役員秘書をしていました。
事業の統括者が、1つの案件や現場に関わりすぎることで、事業部全体の流れが停滞するリスクを間近で感じてきました。そのため、統括者が自ら動くべき仕事、部下に任せるべき仕事、そしてツールで自動化すべき仕事を日々采配し、組織の最適化を行ってきました。
本来、上流工程の仕事をするべき経営者が、現場に出続けることで生じる「3つのリスク」について解説します。
今の忙しさが「未来への投資」になっているか、一度立ち止まって確認してみてください。
社長がいつまでも「実務」を手放さないと、どうなるのか?
売上の上限が、社長1人の規模に制限される

経営者の稼働時間が、そのまま売上の天井になっていませんか?
社長という「1人の人間」の労働力には、物理的な限界があります。
どれだけ熱意があっても、1日は24時間しかありません。
社長のスキルや熱量に依存したモデルは、本人の時間と体力の限界が、そのまま事業の限界になってしまいます。
これでは、いつまでも「労働の切り売り」から抜け出せません。
事業を右肩上がりに成長させることが、物理的に不可能になってしまうのです。
たとえスタッフを雇っても、「社長と同じ成果」が出せない。
結局、すべての商談に社長が立ち会い続け、事業規模が「社長一人が動ける範囲」に固定されてしまうケースは少なくありません。
社長が最前線に出続ける限り、その会社は永遠に「社長1人分のサイズ」のままです。
経営者のリソースをすべて現場仕事に割くと、事業の成長は頭打ちになります。
感覚頼みの説明が、トラブルを招き、チャンスを逃す

社長の頭の中にしかない情報を、その場の状況に合わせて話していませんか?
情報を整理せず「個人の感覚」で伝え続けることは、大きなリスクを孕んでいます。
標準化されていない説明は、相手の受け取り方に依存しすぎてしまいます。
本来伝わるべき価値が届かなかったり、間違った期待を持たせてしまったり。
その結果、「思っていた内容と違う」といったトラブルが発生しやすくなります。
- 商談で言ったつもりだったが、伝わっていなかった
- 相手によって説明の順序がバラバラで、懸念点を解消しきれていない
これらはスキルの問題ではなく、情報を「仕組み」として整理していない構造的な問題です。
情報を整理せず感覚で伝え続けると、顧客との認識齟齬やトラブルを引き起こします。
現場の忙しさが、未来への戦略を奪い去る

目の前の実務や商談に追われ、本来考えるべき「事業の方向性」を後回しにしていませんか?
経営者のリソースは有限です。
市場の分析や次の一手の構想といった「創造的な仕事」に時間を使うべきです。
ルーチン化した商談などの「消耗する仕事」に浸かっていては、事業の未来は描けません。
1日中アポをこなし、夜に事務作業を片付ける毎日。
重要だとわかっていながら、数年後の事業構想や収益モデルの改善を後回しにする。
気づけば競合に差をつけられている。
こう事態に落ちいている経営者は、意外と多いんです。
実務での消耗は、経営者としての本来の職務から目を逸らす結果を招きます。
社長が現場の「実務」を代行している間、経営の「最重要課題」はすべて犠牲になります。
「自分がいないと回らない」と感じてしまう方へ
自分がいなくなったら売上が落ちるのでは?
現場に出続けていないと、感覚が鈍って正しい判断ができないのでは?
責任感の強い経営者ほど、こうした不安を抱くものです。
しかし、現場の情報を取る方法は「自分が動くこと」だけではありません。
むしろ仕組みを通じて客観的なデータを吸い上げる方が、より正確な判断が可能です。
「社長が話せば決まる」という状態は、再現性のない不安定な状態を意味します。
現場を離れることは、事業を個人の持ち物から「社会的な資産」へ変える、最も誠実な経営判断です。
最前線から一歩引く勇気を持つことが、事業をより強固なものにします。
実務を卒業するための「仕組み化」4ステップ
では、どうすれば現場を離れられるのでしょうか。
そのための具体的な手順をお伝えします。
自分の頭の中を「見える化」する
いきなり資料を作ろうとしてはいけません。
まずは「毎回必ず話していること」や「お客さまが深く頷くポイント」を書き出します。
自分の頭の中にある「成功パターン」を形にする作業です。
スマホで自分の商談を録音して、後で聞き返してみるのも良いでしょう。
情報の「置き場所」を変える
- 資料やホームページで事前に伝えられること
- 対面でしかできないこと
など伝えている情報を仕訳します。
基本情報の提供は、ホームページや資料に肩代わりさせましょう。
社長が直接話すべき内容を、最小限にまで絞り込むのがコツです。
商談の「質」を劇的に変える
説明に費やしていた時間を、お客さまとの対話に充てます。
本音を引き出し、深い信頼関係を築くための時間に変換するのです。
自分が「説明マシーン」になるのをやめましょう。
対面でしかできない、高度なコミュニケーションに専念する仕組みを作ります。
浮いた時間で「次の一手」を打つ
現場の説明から解放されて生まれた時間を、経営者本来の仕事に投資します。
商談データの分析やサービスの改善、新しい集客戦略の立案などです。
「戦術」の忙しさから抜け出し、未来を創る「戦略」に時間を使えるようになります。
日々舞い込む実務から、未来を作る経営の仕事へ
とはいえ、自分一人で整理しようとすると、どうしても主観が入ってしまいます。
長年現場で戦ってきた経営者ほど、自社のサービスを客観視するのは難しいものです。
だからこそ、第三者の視点を取り入れ、情報を整理し直すプロセスが欠かせません。
何がボトルネックになっているのか、客観的に見極める必要があります。
まずは、あなたの現在の「忙しさの内訳」を整理してみませんか?
どこに「仕組み化の余地」があるのか、一緒に確認しましょう。
その「忙しさ」は未来を創っていますか?
今のあなたの忙しさは、未来を創るためのものか、それとも今日をしのぐためのものか。
もし後者なら、今すぐプレーヤーとしての仕事を手放す準備を始めるべきです。
ビジネスの導線が整えば、社長はもっとも価値を生む「経営」の仕事に専念できます。
5年後、10年後の安定のために、今から一歩を踏み出しましょう。
